引っ越しにいくらかかったのかを、あとから言えるようにする
引っ越しの費用は、二つ以上の月にまたがり、十以上の費目に散らばり、一部は戻ってきます。費目を作るのではなく、一本の線で括るのが実務的です。
引っ越しが終わって一か月ほどすると、たいていの人が同じ疑問を持ちます。結局いくらかかったのだろう、と。そして家計簿を開いても、答えが出ません。
出ない理由ははっきりしています。引っ越しの費用は、二つ以上の月にまたがり、十以上の費目に散らばり、そのうちのいくつかはあとで戻ってきて、いくつかは引っ越しの費用なのか新生活の費用なのか判断がつかないからです。
二つの月にまたがる
契約は前の月、支払いは月をまたぎ、荷物の到着は翌月。賃貸なら、敷金、礼金、仲介手数料、前家賃、火災保険、保証会社の費用が契約時にまとめて出て、そのあと業者の代金、そして新居で必要になるものの購入が続きます。
家計簿を月ごとに見ていると、この一連の出来事が二つの山に割れます。片方を見て、今月は住居費が異常だ、と思い、翌月を見て、今月は日用品が異常だ、と思う。どちらもそのとおりなのですが、どちらも同じ一つの引っ越しの話です。
だから、月で区切る見方をいったん外さないと、この費用は捉えられません。年で見ても捉えられません。引っ越しは、月でも年でもない、出来事という単位で見る必要があります。
一本の線で括る
方法は単純です。引っ越しに関わる記録すべてに、同じ言葉をメモとして入れておく。費目は普段どおりのままにします。
費目を新しく作らないのは、そのほうが後で困らないからです。引っ越しという費目を作ると、家賃も家具も交通費も全部そこに入り、費目としての意味が薄くなります。それに、その費目は引っ越しが終わると使われなくなり、並びの中に残り続けます。
メモで括っておけば、費目ごとの集計はいつもどおり効いたまま、引っ越しという横断的な合計だけを別に取れます。同じ考え方は、旅行にも、行事にも、入院にも使えます。一度覚えると、いろいろな場面で使い回せる書き方です。
どこまでを引っ越しの費用と数えるか
括ると決めた瞬間に、境界の問題が出てきます。新居に合わせて買ったカーテンは、引っ越しの費用なのか。ずっと欲しかった冷蔵庫をこの機会に買ったのは、どうなのか。
正解はありませんが、一つの目安として、引っ越さなければ発生しなかったかどうかで切ると、あとで説明がつきます。カーテンは寸法が変わるので発生した。冷蔵庫は、前のものがまだ使えたのなら、引っ越しがなくてもいずれ買ったかもしれない。
- 迷わず括るもの。仲介手数料、礼金、業者の代金、荷造りの資材、旧居の原状回復にかかった費用、鍵の交換代、各種の住所変更に伴う手数料。
- 括るか迷うもの。新しい家具と家電、カーテンと照明、収納用品、新居に合わせて買い替えた日用品。
- 括らないほうが読みやすいもの。毎月の家賃そのもの、引っ越し後に定着した新しい支出。
境界が微妙なものは、括ったうえでメモに一言添えておくと、あとから外して見ることもできます。迷ったら括っておくほうが、あとで困りません。除くのは簡単で、思い出すのは難しいからです。
戻ってくるお金
敷金は、退去のときに一部または全部が戻ります。戻る時期は、引っ越しから一か月後のこともあれば、数か月後のこともあります。
これを最初から差し引いて書くと、その月に実際に出て行った現金と合わなくなります。出た日に出た額を書き、戻った日に戻った額を収入として書くほうが、口座の動きと一致します。そして、戻ってこなかった場合にも何もしなくて済みます。
合計を出すときは、この入金も同じ言葉で括っておくと、正味の額と、一度に必要だった現金の額の両方が出ます。この二つは違う数字で、次に引っ越すときに必要になるのは後者のほうです。手元にいくら要るかという問いに、正味の額は答えてくれません。
引っ越し後の三か月は、平常ではない
荷物が片づいたあとも、しばらくは普段の水準に戻りません。足りないものが次々に見つかり、新しい街の店の値段の感覚がなく、外食が増える。通勤の経路が変わって交通費も動きます。
この期間の数字を、引っ越し前と比べても意味がありません。比較ができるようになるのは、三か月ほど経って生活が落ち着いてからです。落ち着く前の数字を見て、家計が悪化したと結論するのは早すぎます。
そして落ち着いたあとで比べると、住居費だけでなく、他の費目もまとめて動いていることが分かります。駅からの距離、近くの店の種類、通勤の時間。住む場所を変えるというのは、家計のかなり広い範囲を同時に変えることです。引っ越しの本当の費用は、契約時の一括だけではありません。
記録が途切れていても
引っ越しの前後は、家計簿を開く余裕がいちばんない時期です。記録が飛ぶのは当たり前で、飛んだこと自体は問題ではありません。
幸い、引っ越しに関わる支出の多くは、契約書、明細、カードの利用履歴が残ります。落ち着いてから日付を見ながら入れれば、かなり正確に復元できます。復元しにくいのは、当日の食事や細かい買い物くらいで、そこは合計を一件置いておけば足ります。
一度この合計を出しておくと、次に引っ越すときの見積もりになります。相場を調べるより、前回の自分の記録のほうが実態に合います。家族の人数も、荷物の量も、動く距離も、その数字にはすでに織り込まれているからです。
よくある質問
引っ越し費用は、専用の費目を作ったほうがいいですか。
作らないほうが後で困りません。引っ越しという費目を作ると家賃も家具も交通費も全部そこに入り、費目としての意味が薄くなりますし、引っ越しが終わると使われないまま並びに残ります。費目は普段どおりにして、関わる記録のメモに同じ言葉を入れておけば、横断的な合計だけを取れます。
敷金は、戻ってくるぶんを差し引いて書いてよいですか。
差し引かないほうが口座の動きと合います。出た日に出た額を支出として書き、戻った日に戻った額を収入として書いてください。合計を出すときに両方を同じ言葉で括っておけば、正味の額と、一度に必要だった現金の額の両方が出ます。次の引っ越しで必要になるのは後者です。
新居用に買った家具や家電は、引っ越し費用に含めますか。
引っ越さなければ発生しなかったかどうかで切ると、あとで説明がつきます。寸法が変わって買い直したカーテンは含まれ、前のものがまだ使えた冷蔵庫は微妙です。迷ったら含めておいて、メモに一言添えておくと、後から外して見ることもできます。
引っ越し後、家計が悪化した気がします。
引っ越し直後の三か月ほどは、平常の水準ではありません。足りないものが次々に見つかり、新しい街の店の感覚がなく、外食が増え、通勤経路が変わって交通費も動きます。比較ができるようになるのは落ち着いてからで、それまでの数字で結論を出すのは早すぎます。
引っ越しでばたばたして記録が飛びました。
引っ越しに関わる支出は、契約書、明細、カードの履歴が残っているものが多いので、落ち着いてから日付を見ながら入れればかなり正確に復元できます。復元しにくいのは当日の食事や細かい買い物くらいなので、そこは概算を一件置いておけば足ります。
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