単身赴任や別居中でも、家計を一本にまとめておく
家が二か所になると、家計簿は高い確率で二本に分かれます。分かれたままだと、別居によって家計にいくら上乗せされたのかが、最後まで分かりません。
単身赴任、長期の出張、進学や留学、介護のための一時的な別居。理由はいろいろですが、家が二か所になると、家計簿は高い確率で二本に分かれます。
分かれたまま一年が過ぎ、年末に合計しようとして、どちらにも入っている費目と、どちらにも入っていない費目があることに気づく。そこから照合を始めると、たいてい途中で力尽きます。
二本に分けたくなるのは自然なことです。生活が物理的に分かれているので、記録も分かれるほうが手が動く。ただ、家計として意味のある数字は、合わせたところにしかありません。
二重になるものと、ならないもの
別居で増える費用は、単純な倍ではありません。倍になるもの、少し増えるだけのもの、まったく変わらないものが混ざっています。
- 二重になるもの。家賃と光熱費、通信の基本料、日用品の一式、調理器具や家具の初期購入。
- 増えるが倍ではないもの。食費。一人ぶんが二か所に分かれると、まとめ買いの効率が落ちて、外食や中食の比率が上がります。合計としては別居前より増えることが多い。
- ほとんど変わらないもの。保険料、教育費、子どもに関する支出、住宅ローン。
- 別居のあいだだけ新しく発生するもの。帰省の交通費、荷物の送料、二重の生活を維持するための細かい手続き。
この区別を先にしておくと、記録を一本にまとめる意味がはっきりします。知りたいのは、別居によって家計にいくら上乗せされたか、です。それは二か所の数字を足さないと出ません。
場所の情報を残す
一本にまとめると、今度は、どちらの生活の支出なのかが分からなくなります。だから、費目を分けるのではなく、場所の情報をメモに残すのが実務的です。
費目で分けると、費目の数が二倍になります。食費が二つ、光熱費が二つ、日用品が二つ。これは分類の判断を毎回増やすので、続きません。メモに一語入れるほうが、圧倒的に軽い。
この一語があると、年末には場所ごとの合計も、費目ごとの合計も、どちらも出せます。分け方を先に固定しないぶん、あとから見たい角度を変えられます。別居が終わったあとも、費目の並びが元のままなので、片づけが要りません。
帰省の費用を、どこに付けるか
別居中の家計で、いちばん判断が割れるのが帰省の交通費です。月に何度も往復すると、それだけで固定費の一つになります。距離が遠ければ、家賃に近い規模になることもあります。
扱い方は二つあります。他の移動と同じ交通費にまとめる方法と、別居に伴う費用として独立させる方法。後者をすすめたくなるのは、別居が終わったときに、その費目がまるごと消えるからです。消える費目が独立していると、別居のコストが一目で出ます。
年末年始やお盆のように、帰省と行事が重なる時期は、交通費と行事の費用が同じ日に並びます。ここは分けても分けなくても構いませんが、メモに同じ言葉を入れておけば、あとでどちらの見方もできます。行事の総額を知りたい年と、移動の総額を知りたい年は、どちらもあります。
締め日と、話す頻度
離れていると、月に一度お金の話をする機会が、自然には作られません。同じ食卓にいないので、通りすがりに、今月ちょっと使いすぎた、と言うことがない。だから意識して時間を取らないと、半年経ってから大きな差に気づくことになります。
現実的なのは、締め日を一つ決めて、その直後の週末に十五分だけ話すことです。見るのは、二か所の合計と、いつもと違う数字が出ている費目だけ。細かい内訳は見ません。離れているぶん、話す内容は絞ったほうが続きます。
そして、記録が片方だけ止まっていても、それを責める場ではありません。忙しいほうが止まるのは当たり前です。止まっていたら、その期間は合計だけ後から一件入れておけば足ります。責める場になった瞬間から、記録の精度は落ちはじめます。
生活の水準が、二か所で揃わないこと
別居していると、二か所の生活の水準が自然に食い違います。片方は自炊して、片方は外食が続く。片方は寒さを我慢して、片方は暖房を入れている。どちらも、その場の事情があってそうなっています。
記録が一本にまとまっていると、この差が数字として見えます。見えたときに、それを是正の対象として扱うか、事情の説明として扱うかで、話し合いの性質がまったく変わります。
数字は、どちらが正しいかを教えてくれません。教えてくれるのは、どこに差があるか、それがどれくらいの規模か、だけです。そこから先は二人で決めることで、記録に決めさせると、たいていうまくいきません。
別居が終わったあと
別居が終わると、二重になっていた費目が一斉に消えます。このとき、記録が一本にまとまっていれば、生活がどれくらい変わったのかが、そのまま数字で出ます。
出た数字は、次に同じ状況が来たときの見積もりになります。転勤も、進学も、介護も、一度きりとは限りません。一度きちんと測っておくと、次は迷わずに済みます。
そして、別居前の水準に戻らない費目も出てきます。二か所で暮らすあいだに定着した習慣が、そのまま残ることがあるからです。戻らないこと自体は問題ではありません。気づかないまま戻らないことだけが、少し困ります。
よくある質問
単身赴任中は、家計簿を二つに分けたほうが楽ではないですか。
入力は楽になりますが、年末に合計しようとしたときに照合で行き詰まります。知りたいのは別居によって家計にいくら上乗せされたかで、それは二か所を足さないと出ません。一本にしたうえで、どちらの生活かをメモに一語入れておくほうが、あとの手間が少なくて済みます。
二か所ぶんの費目を作るべきですか。
費目を二倍にすると、記録のたびに分類の判断が増えて続きません。費目は普段どおりのままにして、場所の情報をメモに残すほうが軽いです。年末には場所ごとの合計も費目ごとの合計も出せますし、別居が終わったときに費目の片づけも要りません。
帰省の交通費は、交通費に入れてよいですか。
入れても構いませんが、独立させておくと別居のコストが一目で出ます。別居が終わればその費目はまるごと消えるので、消える費目としてまとめておくと、生活がどう変わったかが数字で分かります。行事と重なる時期はメモに同じ言葉を入れておくと、どちらの見方もできます。
離れていると、お金の話をする機会がありません。
締め日を一つ決めて、その直後の週末に十五分だけ時間を取るのが現実的です。見るのは二か所の合計と、いつもと違う動きをした費目だけにします。細かい内訳まで見ようとすると、離れているぶん話が長くなり、続かなくなります。
片方だけ記録が止まってしまいます。
忙しいほうが止まるのは自然なことです。止まった期間は、合計だけを後から一件入れておけば足ります。責める話題にすると記録の精度がさらに落ちるので、止まったこと自体は扱わないほうが、結果として長く残ります。
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