片方に収入がない時期の、費用の分け方
育休、休職、介護、就学。一方の収入が止まると、それまで機能していた分担が噛み合わなくなります。金額の調整より先に、記録の見せ方を変えたほうが効くことがあります。
育児休業、休職、介護のための離職、資格の勉強、事業の立ち上げ。理由はさまざまですが、一方の収入がゼロかごく小さくなる時期は、多くの家庭に一度は来ます。
そのとき、それまで機能していた分担の仕組みが急に噛み合わなくなります。折半していた家庭は折半できなくなり、収入の比で分けていた家庭では比率が極端になる。そして金額の話とは別に、自分は相手のお金を使っている、という感覚が生まれます。
この感覚は、金額を調整しても消えません。消えるかどうかは、お金の出どころをどう扱っているか、そして記録の上でそれがどう見えているかに、かなり左右されます。
支払った口座と、誰の支出かは、別のこと
記録の上でまず分けておきたいのは、支払いの手段と、費用の帰属です。ある月の生活費がすべて一つの口座から出ているとしても、それはその口座の名義人の支出という意味ではありません。世帯の支出を、たまたまその口座が通しただけです。
家計簿がこの二つを混ぜていると、支払者ごとの集計を見るたびに、片方の名前の横に大きな数字が並び、もう片方の横にはほとんど何も並ばない画面ができあがります。事実としては正しいのに、読むと居心地が悪い。そして居心地の悪い画面は、だんだん開かれなくなります。
対処はそれほど難しくありません。日常的に見る画面を、支払者別ではなく費目別にしておくことです。誰が払ったかの情報は残しておいて構いませんが、それを毎月の会話の中心に置かない。年に一度、精算のために見るくらいの位置に下げておくと、空気が変わります。
先に言葉にしておくと、あとが軽くなる前提
分け方の技術より先に、二人のあいだで一度言葉にしておくと、その後の運用がずっと軽くなる前提があります。
- 世帯に入ってくるお金は、稼いだ人のものではなく、世帯のものとして扱う。
- 収入がない期間の家事、育児、介護、看護は、家計に対する負担の一部として数える。金額に換算する必要はありません。
- この期間は一時的なもので、比率はいずれまた変わる。
これは道徳の話というより、運用の話です。この前提を共有しないまま分担率だけを議論すると、毎月同じ論点に戻ってきます。共有していれば、分担率はただの事務手続きになります。事務手続きは、疲れているときでも回せます。
自由に使える枠は、左右対称にする
収入がない側の居心地の悪さは、生活費の分担よりも、自由に使えるお金のところに出ます。相談なしに使える枠が片方にしかないと、もう片方は何を買うにも報告することになる。報告は、それ自体が上下関係の形をしています。
だから、金額の大小はともかく、枠そのものは両方に置くのが無難です。同額である必要はありません。同額でないなら、なぜその額なのかを説明できる根拠が一つあれば十分です。前の年の実績でも、期間限定の措置でも構いません。
記録の上では、この枠は費目を一つ作って、それぞれの名前で分けておきます。中身の内訳は書きません。書かないことがこの枠の意味だからです。中身まで見えていると、枠がある意味がなくなります。見えないことによって成立している信頼というのは、実際にあります。
支払いの流れを、なるべく単純にする
収入がない側が、生活費の支払いを自分の口座から立て替えて、あとで精算する、という形にすると、精算の作業が毎月発生します。この作業は、疲れている時期にはかなり重い。
単純にするなら、生活費の支払いを収入のある側の口座やカードに寄せて、収入のない側には自由に使える枠だけを別に渡す形が、手数としては軽くなります。ただしこの形は、収入のない側が家計の全体像から離れやすいという副作用があります。
副作用を打ち消すのは、記録の共有です。支払いを寄せるなら、記録は両方が見られる状態にしておく。支払わないけれど見えている、という形にしておくと、離れた感じは出にくくなります。逆に、支払いも記録も片方に寄せると、収入が戻ったときに引き継ぎができません。
収入が戻ったときに、何を戻すか
育休や休職が明けると、収入は戻ります。このとき、その時期の分担の仕組みをそのまま続けるのか、元に戻すのかを決めることになります。
判断の材料になるのが、その期間の記録です。収入が少ない側に合わせて生活費を絞っていたなら、絞れた費目と絞れなかった費目が、そのまま記録に残っています。絞れた費目は、収入が戻ってもそのままでいいことが多い。絞れなかった費目は、そこが本当に必要な部分だったということです。
逆に、この時期に貯蓄を取り崩していたなら、取り崩した額と期間も記録に残ります。戻すかどうかは家庭ごとの判断ですが、額が分からないと判断のしようがありません。分からないまま数年が過ぎると、なんとなく減ったという感覚だけが残ります。
記録が途切れやすい時期でもあります
収入がない時期は、たいてい別の理由で忙しい時期です。育児、看護、通院の付き添い、就職活動。記録が飛ぶのは自然なことで、飛んだこと自体を問題にする必要はありません。
この時期に一つだけ残しておく価値があるのは、月ごとの生活費の合計です。一件ずつの内訳が抜けていても、合計が残っていれば、あとから、あの期間はこの水準で回っていた、と言えます。その一行が、収入が戻ったあとの判断材料になります。
合計さえ書けないほどの時期もあります。そのときは、口座の残高だけを月に一度メモしておけば、あとから差で復元できます。それも無理なら、落ち着いてから明細を見ればいい。急ぐ必要のある記録ではありません。
よくある質問
片方が無収入のとき、生活費は折半すべきですか。
折半という形は、収入が近いときに手間が少ないから選ばれているだけで、公平さの基準ではありません。片方の収入が止まっている時期は、世帯に入るお金を世帯のものとして扱い、支払いは手数の少ない口座に寄せるほうが実務的です。分担率を細かく決め直すより、自由に使える枠を両方に置くほうが効きます。
相手のお金を使っている感じが消えません。
金額の調整では消えないことが多いです。効きやすいのは、日常的に見る画面を支払者別ではなく費目別にすること、そして相談なしに使える枠を両方に置くことです。額が同じでなくても、枠が片方にしかない状態が続くと、何を買っても報告する関係になります。
無収入の側が支払いを立て替えて、あとで精算する形はどうですか。
精算の作業が毎月発生するので、疲れている時期には重くなりがちです。支払いを収入のある側に寄せて、記録は両方が見られるようにしておくほうが手数は少なくて済みます。支払わないけれど見えている、という形にしておくと、家計から離れた感じも出にくくなります。
育休が明けたら、元の分担に戻すべきですか。
戻すかどうかは家庭ごとの判断ですが、その期間の記録があると決めやすくなります。絞れた費目はそのままでよかった部分で、絞れなかった費目は本当に必要だった部分です。貯蓄を取り崩していたなら、その額と期間も記録に残っているはずです。
忙しくて記録が続きません。最低限どこを残せばいいですか。
月ごとの生活費の合計だけで十分です。内訳が抜けていても、合計が残っていればあとから水準は言えます。合計を出す余裕もなければ、月に一度、口座の残高をメモしておくだけでも、あとから差で復元できます。落ち着いてから明細を見ても間に合います。
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