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子どもが生まれた最初の一年、家計はどう動くか

最初の一年は金額が増えるというより、支出の形が変わります。前置きの一括、月々の消耗品、読めない突発。この三つを分けて記録しておくと、二年目の見積もりが立ちます。

退院した週のあたりで、家計簿が真っ白になっている家庭はとても多いです。書く余裕がなかったからで、それはごく当然のことです。ただ、その空白がちょうど、その家の支出構造がいちばん大きく動いた時期と重なっているところが、少しだけ厄介です。

子どもが生まれた最初の一年は、金額が増えるというより、支出の形が変わります。新しく現れる費目、しばらく消える費目、時期が極端に偏る費目、そして金額の読めない費目が、同時に立ち上がる。だからこの一年は、前の年の記録がほとんど参考になりません。参考にならないという前提から始めたほうが、あとで落胆せずに済みます。

最初の一年の出費には、三つの形がある

一年ぶんをひとまとめに眺めると読みにくいのですが、時間の形で分けると三つになります。前置きの一括、月々の消耗品、そして読めない突発。この三つは、記録のしかたも、見るタイミングも違います。

前置きの一括

ベビーベッド、チャイルドシート、抱っこひも、ベビーカー、肌着や退院時の衣類、そして出産そのものにかかる費用。予定日の前後の数週間に集中して発生し、そのあとは二度と出てきません。金額が大きく、しかも短い期間に固まるので、月の合計だけを見ると、その月だけ家計が壊れたように見えます。

実際には壊れていません。一年に均せば、これは一回きりの立ち上げ費用に近い性質を持っています。だから、この時期の記録には、あとから見て分かる印を残しておく価値があります。費目を一つ分けてもいいですし、メモに同じ言葉を入れておくだけでも足ります。印さえあれば、月ごとの比較をするときに除いて見られます。

月々の消耗品

紙おむつ、おしりふき、粉ミルクや液体ミルク、離乳食、洗剤、そしてサイズが変わるたびに買い替える衣類。こちらは金額が小さくて頻度が高い、家計簿でいちばん記録が抜けやすい形です。しかも一年のあいだに中身が入れ替わります。最初の数か月はミルクとおむつが中心で、半年を過ぎると離乳食が加わり、一歳が近づくとおむつのサイズも一枚あたりの価格も枚数も変わります。

この層は、一件ずつ書き切ろうとすると必ず途切れます。まとめ買いの一件だけを書いて、袋の中身までは追わない、という粗い書き方でも、月ごとの水準は十分に読めます。読みたいのは一件の内訳ではなく、月にどれくらいの水準で出ているかのほうだからです。

読めない突発

発熱、夜間の受診、任意の予防接種、健診の付き添いにかかる交通費。地域や年齢によっては、こども医療費助成で窓口の負担がほとんどない一方、助成の対象にならないものや、そもそも医療費ではない出費は残ります。タクシー代、付き添った側の食事、その場でとりあえず買った体温計や保冷剤。

この層は金額が読めないので、上限を決めても意味がありません。決めた上限が守れるかどうかが、自分の行動とほとんど関係ないからです。書いておいて、一年後に合計を見る。それくらいの扱いが実態に合います。

収入の側も、同時に動いている

支出だけを見ていると、この一年の家計は説明がつきません。同じ時期に、入ってくるお金の形も変わっているからです。

産前産後の休業と育児休業のあいだ、給与の代わりに給付が入ります。給付は、月々の給与と同じ日には入りません。何か月かぶんがまとめて入ることもあれば、申請から入金まで間が空くこともある。すると家計簿の上では、収入がほとんどない月と、収入が大きく見える月が交互に並びます。家計が不安定になったわけではなく、入金の時期がずれているだけです。

この形の年に、月ごとの収支だけを見て一喜一憂しても、判断の材料になりません。この時期に見るなら、収支は三か月なり半年なりの区切りで見て、月では支出の側だけを見るほうが、読み取れるものが多くなります。

出産育児一時金のように、費用の支払いと相殺される形で処理されるものもあります。手元を通らなかったお金を書くかどうかは、方針を先に決めておけばどちらでも構いません。書かないなら、そのぶん一年の合計が実態より小さく出ることだけ覚えておいてください。書くなら、収入と支出の両方に一件ずつ立てて、同じ日付にしておくと後で対応が分かります。

この一年で決めておくと、あとが楽なこと

完璧な分類体系を組む時期ではありません。眠れていないので、判断の回数は少ないほどいい。決めておく価値があるのは、次の三つくらいです。

  1. 子どもに関する支出を、独立した費目にするかどうか。分ければ一年の合計が一目で出ますが、食料品や日用品と重なる買い物のたびに、分ける判断が発生します。分けないなら、メモに一語入れておく運用でも後から拾えます。
  2. 前置きの一括を、どこまでその月の支出として扱うか。月ごとの比較を壊したくないなら、印を付けておいて、あとで除いて見られるようにしておきます。
  3. 記録が途切れた期間を、あとで埋めるかどうか。埋めない、と先に決めておくのも立派な方針です。

三つとも、正しい答えがあるわけではありません。決めておくこと自体に価値があります。決めていないと、いちばん疲れているときに毎回考えることになるからです。

途切れるのが前提です

この一年、記録は必ず途切れます。入院しているあいだ、夜が続いた週、発熱で数日つぶれた週。そして、埋めようとして力尽きた人のほうが、埋めずに再開した人より、結果として記録が残っていません。

空白があっても、その前後の月が残っていれば、消耗品の水準は読めます。読めないのは、空白の月に何が起きたかだけです。一年の全体像を理解するうえで、それは実はそれほど致命的ではありません。

再開するときは、空白を埋めるところからではなく、今日の一件から始めるのが、いちばん続きます。

一年目の数字は、二年目の参考にならない

一年ぶんが溜まると、来年の見積もりを作りたくなります。ただ、この一年に限っては、そのまま横に伸ばすとかなり外れます。前置きの一括はもう発生しません。消耗品は中身が入れ替わります。そして保育園に入るなら、保育料という新しい固定費が加わり、代わりに日中の消耗品が減ります。

使えるのは合計ではなく、層ごとの数字です。消耗品の月あたりの水準、突発の年間合計、一括の総額。この三つを別々に持っておくと、二年目の見積もりでは消耗品と突発だけを引き継いで、一括の欄には保育料を入れる、という組み替えができます。

一年目の記録の価値は、来年を当てることではありません。うちの家は何にお金がかかる家なのか、という癖を知ることのほうです。それは二年目にも、三年目にも使えます。

よくある質問

子ども関係の支出は、独立した費目にしたほうがいいですか。

どちらでも構いませんが、分けるなら買い物のたびに分類の判断が増えることは覚えておいてください。おむつと洗剤を同じ袋で買う場面は毎週あります。分けないで、メモに一語だけ入れておく運用でも、年末に検索すれば合計は出せます。手が動くほうを選ぶのが正解です。

出産準備で買った大きなものは、その月の支出に入れてよいですか。

実際に現金が出た月に書くのが、口座の動きとは合います。ただそのままだと月ごとの比較が壊れるので、その一件に印を付けておいて、あとで除いて見られるようにしておくと便利です。書き方を工夫するより、見るときに切り替えるほうが、記録は事実のまま残ります。

育休中は収入が月ごとにばらつきます。どう見ればいいですか。

給付は給与と同じ周期では入らないので、月ごとの収支は形が崩れます。この時期は収支を三か月や半年の区切りで見て、月単位では支出の側だけを見るほうが読めます。収入がない月が続いても、それは入金の時期がずれているだけということが多いです。

入院中や体調の悪い時期に記録が飛びました。埋めるべきですか。

埋めなくて構いません。記憶で埋めると、思い出せる大きい支出だけが入り、小額で頻度の高いものが抜けるので、その月だけ構成が歪みます。空白のままにして、年の合計を見るときに何か月ぶんの数字なのかを分かるようにしておくほうが、扱いやすくなります。

一年目の記録は、二年目の予算にそのまま使えますか。

そのままでは外れます。出産準備の一括は二度と発生せず、消耗品の中身も入れ替わり、保育園に入るなら保育料という新しい固定費が加わります。使えるのは合計ではなく層ごとの数字で、消耗品の月あたりの水準と、突発の年間合計だけを引き継ぐのが実用的です。

こども医療費助成があるので、医療費は書かなくてよいですか。

窓口で払っていないなら書くものがありません。ただ、助成の対象外のもの、受診に伴う交通費、付き添いの食事などは残ります。金額は小さくても回数が多いので、合計すると見過ごせない額になることがあります。助成の条件が年齢で変わる地域もあるので、変わる時期だけ頭に入れておくと驚かずに済みます。

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