月に一度、家でお金の話をする
どう切り出すか、何を見るか、何を見ないか。この時間が裁判にならないための条件は、話し方より先に、開く日と見る範囲の決め方にあります。
家計の話をしようと切り出すのが難しいのは、その一言がほぼ必ず、何かの問題が起きた合図として受け取られるからです。話そうと言われた側は、身構えます。何を指摘されるのだろう、と。
そして実際、切り出す側にも指摘したいことがあります。今月の外食が多かった、あの買い物は必要だったのか。そこから始めると、その話し合いは一回で終わります。次の月に同じことを言い出せる空気は残りません。
この時間を続けられる形にするための条件は、話し方の工夫より前にあります。いつ開くか、何を見るか、何を見ないかを先に決めておくこと。決まっていれば、開くこと自体が合図にならなくなります。
日を固定する
いちばん効くのがこれです。毎月同じ日に開くと決めておくと、「話がある」という切り出しが要らなくなります。開くことに理由が要らないからです。
日取りは、カードの締め日か給料日の少しあとに置くのが実際的です。締め日の直後なら、前の期間の数字がひととおり出そろっています。給料日を家計の区切りにしている家庭なら、その翌週でも構いません。月末は忙しく、月初は数字が出そろっていないので、どちらも避けたほうが続きます。
長さも決めておいてください。三十分で終わる形にすると、開く前の抵抗がかなり下がります。終わらなかった話は次の月に回してよい、と決めておく。毎月あるので、回せます。
そして、この時間は二人で同じ画面を見ている状態にしてください。片方が数字を持っていて、もう片方が聞かされる形だと、内容にかかわらず報告と講評になります。同じものを同時に見ていると、少なくとも情報の非対称はなくなります。
三十分で見る三つ
見る範囲を絞らないと、時間内に終わりません。三つで足ります。
- 期間の合計。今回の期間に、家からいくら出たか。前の期間との差も一緒に見ます。ここでは理由を探さず、数字だけ確認します。
- 大きかった費目の上から三つ。金額の順で上から三つだけ見ます。四つ目以降は見ません。
- 来月に分かっている予定。車検、保険料、学校の集金、帰省、家電の買い替え。金額が読めているものを言葉にしておくと、来月の数字が跳ねたときに驚かずに済みます。
三つ目が地味に効きます。前もって分かっていた支出は、起きたときに問題になりません。問題になるのは、予定に入っていなかった支出のほうです。だから、この三十分の主な生産物は反省ではなく、来月の見通しのほうだと考えておくと、話の向きが自然に前を向きます。
合計が前の期間より大きかった月に、理由を一つ探しておくのは有効です。ただし「誰が使ったか」ではなく「何があったか」で探してください。帰省があった、家電が壊れた、子どもの学期が変わった。説明のつく増加は、家計にとって問題ではありません。問題なのは、説明のつかない増加のほうで、それは三か月続けて出たときに初めて分かります。
見ないものを、先に決める
何を見るかと同じくらい、何を見ないかを決めておくことが効きます。
個人の裁量に属する支出は、この時間の対象から外しておく。各自の財布から出た分、趣味、付き合い、身なりに関わるもの。これらを毎月点検する形にすると、話し合いは家計の運営ではなく生活の申告になります。申告を求められる側は、次第に金額を伝えなくなり、伝わらない支出が増えて、帳簿の穴が広がります。
もう一つ、一件ごとの内容にも踏み込まないでおくと楽です。費目の合計までにしておく。外食が多かったという話はできても、どの外食が多かったという話はしない。前者は家計の話ですが、後者は個人の予定の話です。
この線引きは、透明性を下げるように見えます。実際には逆のことが多い。見られる範囲が決まっていると、その範囲については素直に出せるからです。全部を見せる約束は、破られるときに全部が隠れます。
一つだけ決めて終わる
毎回、決めごとを一つだけ持って終わる形にすると、この時間に意味が残ります。三つも四つも決めると、次の月には誰も覚えていません。
決めごとは小さいほうが実行されます。使っていないサブスクを一つ解約する。生活費に入れる額を来月から見直す。子どもの習い事の支払いをどちらの口座から出すか決める。この程度の大きさで足ります。
そして、その決めごとを書き残してください。次の月の最初に、前回の決めごとが実行されたかどうかを一言確認する。これがあると、話し合いが毎月ゼロから始まらなくなります。実行されていなくても責めないでください。実行されなかったという事実自体が、その決めごとが実際には難しかったという情報です。
うまくいかない月がある
この時間が険悪になる月は来ます。収入が減った月、大きな出費が続いた月、片方の仕事が忙しくて記録がほとんどない月。
そういう月は、数字を見るのをやめて構いません。今月は数字を見るのに向いていない、と言って三分で終わらせる。無理に開いたまま続けると、この時間そのものが嫌なものとして記憶され、翌月から開かれなくなります。
そして、記録が抜けている月に、抜けを埋めることから始めないでください。埋める作業は話し合いの前提ではありません。抜けたままの数字で、分かる範囲の話をするほうが、翌月に続きます。
続けている家庭でも、年に二、三回は飛びます。飛んだ月の次の月に、何事もなかったように開けるかどうかだけが、この習慣の実際の強さです。
よくある質問
家計の話をどう切り出せばいいですか。
毎月同じ日に開くと決めてしまうと、切り出す必要がなくなります。開くことに理由が要らなくなるからです。日取りはカードの締め日か給料日の少しあとが実際的で、前の期間の数字がそろっています。切り出しが難しいのは言い方の問題ではなく、開くこと自体が何かの合図になっているからです。
三十分で何を見ればいいですか。
期間の合計と前の期間との差、金額の大きかった費目の上から三つ、そして来月に分かっている予定の三つで足ります。四つ目以降の費目は見ません。来月の予定を先に言葉にしておくと、数字が跳ねたときに驚かずに済むので、この時間のいちばんの生産物はそこになります。
相手の使い方を指摘したくなります。
費目の合計までにとどめて、一件ごとの内容には踏み込まない線引きにしておくと、話が生活の申告になりません。増加の理由を探すときは、誰が使ったかではなく何があったかで探してください。帰省があった、家電が壊れた、といった説明のつく増加は家計の問題ではありません。
個人の買い物も話し合いの対象にすべきですか。
各自の裁量に属する支出を毎月点検する形にすると、点検される側は次第に金額を伝えなくなり、帳簿の穴が広がります。見る範囲を決めておくほうが、その範囲については素直に出せます。全部を見せる約束は、破られるときに全部が隠れます。
話し合いが険悪になった月は、どうすればいいですか。
その月は数字を見るのをやめて、三分で終わらせて構いません。無理に続けると、この時間そのものが嫌なものとして記憶され、翌月から開かれなくなります。記録が抜けている月も同じで、抜けを埋めてから話そうとせず、分かる範囲だけで終わらせるほうが翌月に続きます。
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